深谷方言小辞典

 この小辞典は、平成三年から十二年までの間に、土地の老人などの実際の会話から、少しづつメモしておいたものがもとになっている。
 見出しその他、発音をわかりやすくするために、現代仮名遣とした。ついでに解説文も現代仮名遣となった。マル数字は金田一京助編纂の辞書で使われるアクセント符号で、「深谷」は尻上がりで◎(0)、「大宮」は2〜4までが上で次の助詞が下がるのでCとなる。
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後から追加した項目は★印で示した。

行かっといいA  行かずともよい。「行かっとよかんべ」とも。

いぶる[ラ五]◎  ぶつぶつ不平を言う。不満な態度を表す。

いやんばいす@  いい按配です。挨拶の「今日は」の意味で使う。

いら[副]@    「えらく」の転か。非常に、大変に、多くの意味。「いら怒るなぃ」など、良い意味の言葉には続かない。今は「大変良くできました」と言うが、「大変、非常」など程度のはなはだしいことをいう副詞は、もとは文字の通りの意味で、良い意味には使われなかった。時代とともに用途が広がってきたもので、「全然」も程度のはなはだしい意味とされれば、「全然良かった」という使い方も、日本語の乱れとはいえないかもしれない。

うなる[ラ五]A・うなう[ワ五]◎ 田畑を耕す。「うね」を作るの意味か。

うらうらする@  うろうろする。うろうろ歩き回る。

うんまける[下一]◎ 容器の中のものを引っくり返して出したり、撒き散らすこと。

おおさきどうかD

おこさまC    お蚕さま。

〜おさんないA  〜したくとも充分できない。

おっぱたき◎   売れ残りの娘。

おっぺす[サ五]B 押す。

かくなす[サ五]B 隠す

かくねる[下一]B 隠れる

かくらん(する)B 「鬼の霍乱」のかくらんだが、サ変動詞化する。

がちゃぽんポンプD 井戸水を汲むために設置された手押しのポンプ

がれる[下一]A  枯れる。老人がくたびれてくることにも言う。

かんます[サ五]◎ かき混ぜる。

きびしょ◎    きびす。急須。

きょしょっぺC  妙にきれい好きな人のこと。

きょしょっぺぇ[形]C 妙にきれい好きであること。

ぐんじがる[ラ五]C くねや柵植えの作物などが直線に並ばずに、不並びであること。地方独特の言葉と思う。語源を想像すると、日本語では「ナ行+し」が「んじ」となるので、「ぐん」はやはり「くね」と関係あるか。「がる」は「離る」かもしれないが、こんな解説では出来過ぎかもしれない。

〜げ  ★形容動詞の活用。語源は気(け)か?。 無さげだ(無さそうだ)、有るげだ(有りそうだ)、居なげだ(居ないようだ)、良さげな(良さそうな)。晴れるげだ(晴れそうだ)

けなりぃ[形]B  うらやましい。古語辞書にある「異(け)なり」と同じ意味で、気持が通常でないことからきた言葉。だから「けなるい」とはあまり言わない。岐阜県出身の勝川克志氏のマンガにもあった言葉。

けなるがる[ラ五]@ うらやましがる。

小一時間@    「小半時」とは半時のさらに半分のことだが、小一時間は半時間(30分)のことではなく、一時間弱の意味で使われる。

こーたれる[下一]◎ 叱られる。「頭(こうべ)を垂れる」の意味か。

こじはんB     ★小昼飯(こぢゅうはん)。午後3時ごろの労働の合間に食べるおやつのこと。芋や唐茄子(かぼちゃ)を煮たものや、焼餅(中身は小麦粉や残飯に野菜)など。5時半でもないのにコジハンとはこれいかに、などと言って食べた記憶がある。

こそっぺぇ[形]C  のどに飲み込んだ食物などがひっかかる感じがする。のどの通りが悪い。

こきたねぇ[形]@

こにくらしい[形]@

こっぱづかしい[形]E 少し恥しいという意味ではない。「きたない」「憎い」などの言葉は、特に女性では直接口にするのがはばかれるので、それを和らげるために「こ」をつけるのだろう。

ざぐり◎     繭から糸をとるときの糸巻の道具。

三百代言D    詭弁を弄すること。その人。辞書にある。

しいな◎     古くなった種もみ。

じぇね@     銭。「ぜね」とも。

しのぎ@     葬式で親戚などにふるまう簡素な食事。一時しのぎのような簡単なものが多いが、「精進料理の儀」を略して「シの儀」としたものと思われる。江戸時代の歌舞伎若衆の隠語で同じ用例があるらしい。

しもたや◎     昔の繁栄を過ぎて傾いてきた商店のこと。「仕舞た屋」

じゅく(言うな)A  自分勝手なことを言って周囲を困らせるな。「自由句、自由口」の意味。

〜じょっき@   「茄子じょっき」といえば茄子を材料にした料理ばかりのこと。

しょっぺぇ、しょっぱい[形]B  垢抜けない身なりなどのこと。

じんぎを言いに行く@  人の死の知らせを聞いてすぐに別れの言葉を言いに行くこと。漢字で書くと「贐儀」で、別れのはなむけの意味。「仁義」ではない。

じんじく(する)@ 後から付加されたものなどが、周囲と釣り合いがとれてぴったりしている。ふさわしいものとして馴染んでいる。

神社本庁幣(へい)  神社界の用語。普通は「じんじゃほんちょうべい」だが、埼玉などでは語尾に「べぇ」が付く言葉は下品との意識があってか、濁らないで言う場合が多い。

砂ずり(する)C     土壁を塗るときに、砂とのり(にかわ)を混ぜて塗ること。

すらっこと◎   空っ事。空虚な嘘や空想。「せらっこと」とも。

すらっぺぇ[形]C 嘘のようで信じ難いこと。

すれっからし◎  すれた娘のこと。

タイワ◎     タイヤ。輪の形であることからワと変化したもの。

たんと[副]◎   たくさん

ちがい◎     作物が凶作であること。

ちっと[副]@   少し。

ちっとんべ◎   少し。

でーこ◎     大根。

てたれた[形動]A かどのとれた人を「てたれた人」という。下一段化して「てたれる」とも。

てらかん◎    はげ頭のおやぢ。またはおやぢのはげ頭のこと。映画俳優か登場人物の姓名からきたものか。

てんとさま@   お天道さま。太陽。

どっくむ[マ五]◎ 飲み込む

とんばか◎    トンマでバカの意味。とぼけていること。その人。

なから[副]A   だいぶ〜、相当〜の意味。

なす[サ五]@   借りたものを返すこと。

なるい[形]A   人や動物が人なつっこいこと。「なりぃ」とも。

なんでかんで[副]◎ 何が何でもの意味。

にしめる[下一]B  白っぽい色の野菜などを、汁の色が染み込むまで煮ること。「煮しめたような(色の)シャツ」とは黄ばんだシャツのこと。

にぼうと◎     ★幅広の麺を野菜などとともに煮込んだ郷土料理。夕食に大量に作り、翌日の朝と昼もこれで間にあった家も多かった。何度も煮直すと、汁も粥かすいとんのようにねっとりとしてくる。ホウトウは漢字では「食ヘンに専」と「食ヘンに托のツクリ」の二文字。

入梅◎      梅雨入りの意味のはずだが、梅雨の期間をいう人が多い。「今年の入梅は長い」

ねり@      楡。「ねりやま神社」など。福井県方面のある地域でもいうらしい。

のくとい[形]B  ぬくたい。温かい。

のじきる[ラ五]@ でしゃばりで、どこでも出て言ってその場を仕切ること。

のっこむ[マ五]B 押しかけ女房になる。

のて@      破天荒なことをする人。粗野な言動をする人。

のめっこい[形]C 親しい関係にあること。

乗合バスD    俗に言う共同便所のこと。方言とはいえない。

のんぼ猫C    のら猫。家に帰らない猫。人に喩えてもいう。「のんぼ猫になる」

はあ[副]@    はや。もはや。もう。

はんでぇB    稲架。

ひすたれる[下一]@  ?

ひすばる[ラ五]@  干からびて伸びきってしまうこと。猛暑のときの犬猫の姿勢をいうこともある。

ひっこしがないB 意気地がない。「引く腰」の意味か。アクセントは「っこ(3)」が上で「し」が下。古今亭志ん朝の落語でも聞いたがアクセントは「引越◎」と同じ尻上がりだった。

ひっちまじる[ラ五]B つねる。

ひっつばく[カ五]C  無造作に破くこと。

ひとぼっちB   ゆでたうどんの一かたまり。

ひとっちゃべるAC シャベルで掘るときの深さの単位。シャベルの皿状の部分の長さ。

ひぼっこ◎    紐。「ひもっこ」とも。

ひゃくしょっぺD 貧乏人根性の人。

ふったかる[ラ五]◎ その家に金運が寄り付いてくること。

ふんじばる[ラ五]C 縛る。

ほうりき落とす[サ五]E 放り落とす

ほうりき出す[サ五]D  放り出す

ぼっこす[サ五]B   壊す。

ぼっこれる[下一]◎  壊れる

ぼっこれテープD 壊れたテープレコーダー。同じ言葉を繰返すたとえ。

まっつぐ[副]B  まっすぐ

まっと[副]@   もっと

まんからC    どこまでホラか本当かわからないことを言う人のこと。

婿取りのはりまたぎ ののしっていう言葉。梁(はり)を跨ぐことか。裁縫道具の物差しは跨ぐなというが、針は跨ぐというほどの大きさではないので、梁のことだろう。

〜むし@     群馬県の山村部などでは目上の人に語るときに「晴れて来たなぁむし」などといい、「主、大人(うし)」から来た言葉のようにも思える。当地では滅びかけている言葉で、ある老人がある感情からとっさに使った例では、哀訴の調子にも聞え、上下の関係なく使った。「そんなことがあるむし」(「それはないでしょ○○さん」といった感じ)

やけっぺし◎   やけど。

やっこい[形]B  柔らかい。「やぁらっけぇ」とも。

よいっと[副]A  たくさん。ものがいっぱいあること。