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      暢月歌集

  平成十四年十一月

年ごとの祭の隅のさびしさは、昨年(こぞ)の翁の病みてありてふ

翁はも、眠りてあはれ。今朝見舞ふ人に足向け、神のごとくあり

  平成十四年十二月

  十二月九日 初雪
降ろす荷の篭目をとほる雪の粒。人それぞれは、めでたきものかな

ひろ道の脇の小路にそぞろ入り、旧き神見し路は(たが)はず

  奈良県丹生川上神社の記事にふれて
神の跡、水の底へと消ゆといふ。語りし君の、宿り悲しも

  平成十五年一月

餅屑を鳥の餌とてまく、庭に、紛ふことなき雪の朝かな

  昨秋よりうれひあり
遠くあり近き外国。悪態をつくはらからの卑しくも見ゆ

  深谷の社の歌より二首(大字手計・鹿島神社、新会・古櫃神社)
みきのもと、室井の水の(くす)しきを告げてはかへる鹿島の鳥かな

青銅の玉の装ひ。君なれば、大荒彦の神にこひつつ
  右の他十一首と詞書は『故園』(深谷郷土文化会)掲載予定