楡の小百科

楡の地名 〜楡とタモの木

楡の地名

 全国に「楡」の字を含む地名は多い。
 Mapion( http://www.mapion.co.jp/ )の「住所を入力」欄に「楡」とだけ入れてみると多数が表示される。

 関東では、埼玉県日高市に「楡木」、栃木県鹿沼市に「楡木町」がある。「楡木」は、島根県八束郡島根町、熊本県熊本市にも見え、滋賀県彦根市に「楡町」がある。いづれも楡の木が茂っていた土地なのだろう。
 「楡原」(新潟県栃尾市、富山県婦負郡細入村)、「楡島」(新潟県新井市)、「楡生」(福岡県築上郡吉富町)も楡の生えていた場所のことで、湿地だったようだ。
 岐阜県安八郡輪之内町の「楡俣」、長野県東筑摩郡坂井村の「楡窪」は、楡の木のウロの形をいったか、二俣道のそばに楡の木が茂っていたのだろう。
 「長野県南安曇郡三郷村大字温楡」は大字が温(ゆたか)、字が楡である。アツニレではない。北海道の厚岸(あっけし)は、アイヌ語の「アツニケウシ」(楡の木の皮を剥ぐところ)が縮まったものといい、アツが楡のことである。

たものき

 宮城県古川市の「楡木」は「たまのき」と読む。楡のことを方言でタモ、タマといい、東北地方にはタモギ、タモノキという地名は、かなり多い。(以下もMapionの検索で「たも」とだけ入れて調べてみたもの)
 青森県では弘前市-田茂木町、八戸市-田面木など10例近くがあり、岩手県も盛岡市-田面野木など10例程度、秋田県では大曲市の[たもノ木」など10例以上がある。
 山形県ではそれらしいのは、村山市-たも山、新庄市-多門町だけだが、鶴岡市や東田川郡を中心に、前田元、上田元、下田元といった地名が実に多く、考えさせられる地名である。多門町は新潟市にもある。

 タモは沢や川の名の地名にも多く、青森市に田茂木沢、秋田県雄勝郡羽後町に田茂ノ沢・多茂木沢、宮城県本吉郡歌津町に田茂川、福島県猪苗代町に田茂沢がある。田茂沢は栃木県にもある。青森県木造町の田茂萢(たもやち)はタモの茂る湿地という意味だろう。岩手県岩手郡玉山村の田茂内も、ナイをアイヌ語の沢とするなら同じ意味の地名である。となると「玉山村」の玉もタモからきたのかもしれない。古川市のタマノキは楡の木のことだが、しかし各地の「玉」のつく山や川などの地名をタモのことかどうか検証するのは大変な作業になるだろう。

 坂上田村麻呂の母の出身地ともいう福島県郡山市田村町に田母神(たもがみ)というところがある。福島県内には同じ地名が他にいくつかあるらしい。田を守護する神から来た地名で、田村麻呂の子孫が散らばってその神を祭ったことに由来すると説明される。神とされたタモの木が自生していた湿地や沢の水で田が開墾されたのかもしれず、再検証する価値はあるかもしれない。
★補足 タモの木そのものは楡ではない木をさすことのほうが多いようだ。Wikipedia タモ参照。