神棚のまつり方
1、神棚の位置
家庭の幸福の基は、「神棚のまつり」からともいひます。日本人は、家の中のどこかに「小さな空間」を仕切って神さまを祭り、その下で人間は暮らし、また神さまへは「供へ物」などを供へて祭り、心の安らぎや思ひやりの心、家族それぞれの責任感をつちかって来ました。
むかしは部屋ごとにいろいろな神さまを祭った例もありますが、今は「神棚」を主にお祭りすることが行なはれます。
そんなわけですから、神棚は、いつも家族の集ふ場所である居間を設置場所とすることをおすすめしてゐます。
神棚の高さは、普通は和室でも畳の上に立ったままお参りしますから、人の目の高さより低くならない位置とします。
神棚の向きは、南向きか東向きの方角が良いとされますが、家の間取りによっては、家族を見下ろす明るい場所を第一に考へて決めます。
2、おふだ
宮形には扉が一つのものや三つのものなどがあります。
一つの場合は、「大神宮さま」「鎮守さま」「その他」の順に重ねて納めます。
三つの場合は、中央に「大神宮さま」を納め、向かって右左に、「鎮守さま」や「他のおふだ」を配置します。
(1)
伊勢神宮は、日本の国の総鎮守の神さまでもあります。
交通の不便な江戸時代のころから、毎年、何百万人もの国民が伊勢へお参りをし、毎年、伊勢のおふだを家々に祭って来ました。伊勢のおふだは特殊な魔除けのおふだとは異なり、国民の農業漁業などを守護するもので、また伊勢参りによってさまざま芸能音楽が各地へ伝へられて普及し、神宮暦によって生活必需品ともいふべき暦も身近なものとなりました。
伊勢のおふだは、普通には「大神宮さま」と呼びます。古くは単に「お祓ひ」と呼ばれ、新年を祓ひ清めた(つまり新年の平穏と繁栄を祈った)しるしのおふだでもあります。
新しく引っ越して来て、「大神宮さま」の入手方法がわからない場合は、地域の神社役員(氏子総代)のかたにお尋ねください。役員がわからない場合は、近所の古くからの家や商店主などに聞いてみてください。
(2)鎮守さま(氏神さま)のおふだ
各地域には、神さまのお住ひとして最も清らかなふさはしい場所があり、そこには鎮守様(
(3)その他のおふだ
扉が三つあると、どうしてももう一つの神さまを祭りたくなりますが、基本は大神宮さまと鎮守さまの二つです。二つだけでも良いのですが、一応考へられるいくつかの例を述べます。
○出身地の実家の氏神さまのおふだや、遺族会などで参拝した靖国神社のおふだなど。
○深谷市や熊谷市などでは大年神のおふだ、本庄市などでは出雲の神のおふだが多く祭られます。これらの神は位の高い神なので、伊勢の大神宮さまと重ねて祭り、三座目には別の神を配する場合もあります。
○地域に講社があり、代表者が代参して受けて来てくれたおふだ。深谷地域では群馬県の榛名神社のおふだなどがあります。
恵比須大黒様の宮形を併せ祭る場合は、向かって右側とされますが、大神宮様を極端に左隅に追ひやらぬよう広めの神棚にします。
大神宮さまは毎年暮れに、鎮守さまのおふだは祭礼のとき(地域によっては年の暮れ)に、氏子の家々に配布されます。新年を新しい気持で迎へるように、おふだも毎年、新しいものを祭ります。古いおふだは、年末の大祓や、明くる年の節分(地域によっては小正月や夏のトンド焼き)などの行事のときに、神社に持ち寄って、お焚き上げしますが、家々でお焚き上げすることも古くから行なはれて来ました。年末には神棚の清掃をします。
右の絵は水木しげる『河童の三平』より引用。踏み台はしっかりしたものを使ひませう。
3、祭器具、お供へ物など
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神棚は、神聖な空間であることを区切るために、前面上方に注連縄を左右に渡して付け、四枚(または八枚の)の
縄は荷作ロープなどで代用できます。紙垂の切り方は図の通りです。
●榊立て
●お灯明など
必需品ではありませんが、お灯明、神鏡、五色旗などのミニチュアも市販されてゐます。
●お皿
米や塩を盛って供へます。
●水器
水を供へます。ふた付きの丸い容器で水滴のような形のものを水玉ともいひますが、透明の清潔なコップやグラスでも良いわけです。
●みか(甕)
供へ物は、米(または御飯)を中央に置き、向かって右左に塩や水を配置します。
お祝などの赤飯や餅、牡丹餅・お萩、季節の初物(松茸御飯、栗御飯など)は、戴き物であってもまづ最初に神棚に供へます。
神棚へのお参りのしかたは、神社参拝と同様に、二拝(二度深くおじぎ)二拍手、一拝が良いとされますが、二拍手の他はそれぞれの習慣でも良いわけです。
忌中について